One s death -the last sword-

そのまま鞘にくちづけ、空を仰ぐようにして銀色の刃を見せる。
「…嘘偽りひとつもありはしない」
先で手の平を強くつくと、細く血が流れ出た。
『ウィード・ガウン』にも、鮮血がつたっていく。
もう、迷いなんてなかった。
「ラーバン・キャンクイール王。…いや、父上」
「―――撤収だ」
ラーバン王の声が、静まった森に高らかに響いた。
その声を合図に、兵士は皆剣を鞘に戻す。
そして足や手を負傷し、その場にうずくまっている兵士に肩をかしながら、ゆっくり、でも確実に歩いていく。
その足の行く先は、カスクライ王国にある我が家だろう。
途中で、俺の肩を軽くおす者がいた。
そいつは笑いながら小さな手をふり、仲間の肩をかりながら歩いていった。
負傷者から順に馬にのっていく様子を見ながら、俺は必死にラーバン王を探す。
赤いマントをはおったラーバン王は、大きく空を仰いでいた。
思い出すラーバン王の水色の瞳は、この空の色と似ている。
「…ラーバン王」
父の横顔がどこか微笑んで見えたのは、俺の思い違いだったのだろうか?



空を仰いでみる。
ベルカの育った母国。
今はもう、その笑い声は聞こえないのだけれど。
どんなに謝っても、遅いんだ。