One s death -the last sword-

「俺は無力で、いくらラ・サズリックの王だって言われても信じられなくて、記憶も…思い出せなくて…。自分1人じゃ、1人の命も助けられない。
この国が好きなだけじゃ、王って認められない。
…安易に、きっと安易に選びすぎたんだ。
俺は、ラーバン・キャンクイールにはなれない」
いくら裏切られても、確かに存在した7年間は消せなかった。
俺は、確かにその瞬間、存在したのだから。
目を閉じて思うのは、カスクライ王国での事。
俺は、ラーバン王を見つめていた。
そしてラーバン王も、俺を見つめていた。
小さな水の音と共に、血が俺の靴についていく。
だけど俺は、目を離さなかった。
「そして俺は、今でも…」
口に出そうとした言葉を、1瞬飲み込む。
言えば、何かが変わっていく気がして。

「今でも、ラーバン・キャンクイールを父親だと思ってる」

7年間、王座にいた父をずっと尊敬していた。
カスクライ王国にいる、何千何万もの人間の期待を一身に受けてそれでも尚、弱みを見せずに世界を見つめる。
そんな様子を影から覗いては、人知れず微笑んでいた。
だから、全てを知った時…。
俺は握っていた剣を鞘に戻し、『ウィード・ガウン』を引き抜いた。