One s death -the last sword-

剣は、天に向かって高く上がっていた。
向かってくる兵士も、俺に気付かず後ろを向いた兵士も、俺の手によって次々と斬られていく。
躊躇いも情けも、もう何もなかった。
ただ眼前にいる敵を斬り続け、矛盾した涙を流す。
「…俺は、何を失った?」
剣を大地に刺し、支えにしながら心の中の思いを叫ぶ。
「全て嘘だった世界で、7年間過ごした。世界になめてかかって、ろくに周りも見ないで『つまらない』と嘆き続けた。
結局俺は、何も失ってなかったんだ…」
失うのは、確かに怖い。
だけど、俺には……。
「俺には、得たものも、失うものも、なかったから…」
後ろから斬りかかってきた兵士を、自分でも驚くくらいの速さで斬りおとす。
胸から噴き出す赤い赤い鮮血が、足元に少しずつたまってきた。
剣にも手にも誰のものか分からない血がついていて、小刻みに震える指先で自分の頬を撫でてみる。
べっとりとした感触に胃の中のものを全て吐きそうになり、急いで手の平で擦った。
兵士に囲まれて守られているラーバンを見つけると、俺は静かにゆっくり手を下げた。
胸の中で、いくつもの思いが交差する。
全て、このラ・サズリック王国から始まったんだ。
「レディック様…」