全て望まれてない事は、知っていた。
自分の王女となる女性を見れば、いくら鈍感でもそれくらいは分かる。
今まで何回か見合い話をもってこられた事はあったが、この女性に決めたのには理由があった。
大体、今までの見合い相手は国外の者が多かった。
それは、もう王の座をおりた前王の企みでもある。
それだけでなく、その女性は何か抱えているように見えた。
「ベルカ・プレスト。貴方が、僕の妻となる人ですか?」
そっと手をさしのべると、その女性は微かに指先をのせた。
上目づかいに見つめてくる瞳は、不安を表しているようにも見える。
そっと、女性は頷いた。
「僕は、クリスタント・ラ・アンサー。ラ・サズリック王国の王だ」
指先をのせた手の平が、不意に軽くなった。
巻き込むように握ると、女性の口元に笑みが広がる。

「僕の隣に、ずっといてくださいますか?」
「……はい。私が、ベルカ・プレストである限り」

初めて話された言葉は、低くそれでいてしっかりと意思を物語っていた。