手近な椅子をひき、レディック様を座らせてから自分も向かいに腰かける。
毎朝2人だけで来るので、椅子は2つしかなかった。
すぐに籠に入ったパンが運ばれ、2人の目の前に皿が置かれる。
まだ温かいパンをレディック様に選ばせてから、飲み物を料理長に頼む。
目の前では、すでにカチャカチャという皿をつく音がしていた。
フォークとナイフを手にとり、自分も食べ始める。
口の中で、食べ物の味が広がっていった。
「そういえばレベッカ」
「何です?」
「昨日ラーバン王に呼ばれてたよね?何かした?」
記憶を、巡らせる。
「ああ、王からの誕生日プレゼントらしいです」
「珍しいね」
「そうでもないでしょう。レディック様だって、誕生日にもう1つ薔薇園を頂いたじゃないですか」
「そりゃ息子だし?あんな大規模な15回目の生誕祭やったら、形だけでも何か必要だろーよ」
食べながら話す話は、普段の姿からじゃ考えられない内容だった。
時々、自分よりも冷めた見方で語る王太子殿下の話に聞きいってしまう事もしばしばあったくらいだ。
「何だと思う?プレゼント」
「……さあ。レディック様は?」
「分かんねぇ」
口をとがらせて悩むレディック様に、下を向いて微笑む。