その日は、朝から暑かった。
レディック王太子殿下の15回目の生誕記念日の数日後の今日、俺は19歳になった。
まだ太陽が出ない内に起き始め、レディック様の部屋の前を警備。
何らいつもと変わらない1日だと、思っていた。
数時間後、部屋の中で物音がしだした。
レディック様が起きられた合図ていってもいい。
そのままノックをし、扉を開けると大きく伸びをする王太子殿下が目に入った。
「おはようございます、レディック様」
「……ああ、おはようレベッカ」
そのままベッドに近付き、乱れたシーツを直す。
枕までもが、遠く離れた窓際まで飛んでいた。
「朝食はどうします?ここで食べられますか」
「ううん、あっちで食べる…。そうだ!!」
いきなりの大声に、耳が痛くなる。
もう15にもなったのに、少々レディック様は幼さを抜けきれていない気がする。
王太子殿下はベッドをおり、スリッパをはくと自分の本棚に向かって歩き出した。
そのまま1冊の分厚い本を抜き取ると、中から何かを取り出した。
――白いリボンのついた、錆びた鍵だ。
「何ですか、それ」
「何だと思う?」
返事を返さないでいると、一層笑みが深くなる。
俺も、無意識に笑みを噛み殺した。