One s death -the last sword-

「いえ…」
顔を上げる事ができなかった。
目を合わせたら、壊れてしまいそうだ。
だが、その事に苛立った父が手紙を地面に投げ捨てる。
実質、本当に小さい事だ。
こんな事に怒るなんて、馬鹿げてる。

この小さな世界に、望むものなんてないのに。
この小さな世界に、俺を満たすものなんてないのに。
だったら、俺は何を求めているという事になるんだ?
9年しか生きていない俺に、何が求められている?
9年を越える何かが、必ず俺には備わっている。

父の最後の1言が、大きく響いた。
同時に、頭の中で何かが切れる。
小さい音だった。

「お前は生きる価値もない!!」

頬を、熱いものが流れた。
歯を食い縛る。
震える息を吐き出しながら、生まれて初めて父を睨んだ。
劣っているとは思わなかった。

「…生きる価値がないのは、父上の方です」
父の眉が、ピクリとはねあがる。

全てを 捨てる。
こんなもの いらない。

「知ってますか?母さんが、昨日男性を家に入れた事を」
母の小さい悲鳴が、聞こえた。

全て 壊してやる。
俺を壊す前に 全部。

「嘘じゃないですよ?僕よりも、貴族の恥さらしだ。そんな人を妻に選んだ、父上、貴方も」