One s death -the last sword-

「昨日の演奏の事だが」
目は、合わなかった。
「あの音楽は何だ？」
「お気に召しませんでしたか」
震えそうになる声を、必死におさえる。
顔が、熱くなったような気がした。
「少し暴力的だ。お前には合ってない。他に曲を知らないのか」
「３曲程しか…」
「それでいい」
その１言で、会話は終わった。
俺はまたフォークをつかみ、静かに食べ始める。
顔は、決して上げなかった。
口の中で、スープの味が広がっていく。
…少し、薄い。
いつもは、こんな味じゃないのに。
昨日の事が関係していると思うと、苛立ちを隠せなかった。
思わず、唇を噛みしめてしまう。
パンを口に運ぶ瞬間、父の咳払いが低く聞こえた。




席につくと、クライスが話しかけてきた。
頬杖をついて興味なさそうにしている俺に気付かず。
「手紙送ったけど、ついた！?」
「ああ…」
曖昧な返事なのに、クライスの顔は明るくなる。
はねた茶色い髪の毛が、揺れた。
「見た！?」
「ああ…」

嘘つきだ。

昨日の事もあってなのか、意外に物事に過敏になってる自分がいた。
顔をちゃんとクライスに向けて、話す。
「ごめん、クライス」
「何が！?」
「手紙の事だけど…」
「何！?」