One s death -the last sword-

家の中で、客の笑い声が響いていた。
また、笑いたくない物を上品に笑っているのだろう。
枕に顔を押し付けて、外の音全てを遮断してみる。
壁には、たくさんの写真が貼ってあった。
ただ風景を撮っただけのものや、母に言われて撮った作り笑いをした人物。
そんな自然な物と不自然な物が、並んでいる。
首元のネクタイを緩め、深く息をつく。
震えるようなため息が出た後、ドアがノックされた。
「ザスクート?」
機嫌をとるような、甘ったるい問いかけの声。
客が来ているからなのだろう。
「はい」
「急いで、下におりてきてちょうだい。お客様に、貴方のバイオリンを聴かせてさしあげれる?」
うえ。
自然に、口元がひきつっていく。
こんな事は一般的に考えても当たり前の事なのだろうが、俺としては非常識極まりない。
何の為にバイオリンをやってきた？と聞かれれば答える事はできなくなるが、多分他人に聴かせるだけの為にやってきたのではないはずだ。
そう思いながらもネクタイをしめ、バイオリンをつかむ。
「はい、母さん」
母の眉間に、皺がよった。
「母…さん?」
「お母様?」
言い直した途端に、笑顔に戻っていく。
作り笑顔の、瞬間を見てしまった。