そんな危ない疑問が、頭の中をよぎった。
「何でも賭けてみなきゃね」
完敗だ。
素直に、負けを認める事にしよう。
グラスを傾け、中身を喉に流しこむと体を落ちていく感じがした。
指先で口元を押さえる。
「サラは、何歳?」
「１９」
「俺、年上なんだけど」
振り向いたサラの顔が、驚きに染まった。
「嘘」
「いや、本当」
腹の底から、笑いが込み上げてくる。
驚きよりも、勝利の喜びが勝った。
「年下だと、思ってた、のに…」
「残念」
サラの、悔しそうな顔を見て更に笑ってしまう。
ダジャレじゃないけど。
息を大きく吐くと、また笑いが込み上げる。
「明日は、６時には起きててよ！！」
「起きてなかったら?」
「ひっぱたく」
顔を背けて拗ねるサラを、見つめる。
本当に、ガキだ。
子供のような純粋さと、無邪気さ。
意地っ張りで、負けず嫌いで、根性がある。
その時、サラの顔に影がかぶさった。
目をこすってみるが、のかない。

『どうして、そんな事をしなければいけない?』

『飛び出したい』

『分かってないくせに』


頭の中で、幾つもの言葉が交差する。
聞いた事のある、言葉の数々。
唇を噛みしめると、ようやく落ち着いた。