「クラバス!!いつまで寝ているつもり!?」
かん高い怒鳴り声が、耳を通り抜ける。
急いで扉を開けると、腰に手をつけた若い女性が立っていた。
「…どちら様で?」
「サラです。おはよう」
両脇にたらした茶色い長い髪の毛に、丸くて大きい色素の薄い瞳。
ただ、意思の強そうな雰囲気が幼さを感じさせなかった。
「おはようございます…」
気の抜けた返事を返すと、サラの目がピクリと動いた。
「もう、警備の時間は始まってるはずですけど」
「昨日、予定表をもらえませんでして。いつ行ったら良かったのか、さっぱり…」
目の前で、大きなため息をつかれる。
結構なショックだ。
「今日はもういいから、女官の仕事を手伝ってくれる? 着替えは済んでるようだけど、すぐ仕事できる?」
「はい」
年下か、同い年のようなのに何で敬語を使わなければならないのだろう?
部屋の扉を閉め、廊下に出ると冷たい空気が体を包んだ。
「力仕事を任せてもいい?」
早足で歩きながら、横目でサラの顔を見てみる。
誠実そうな、気の強そうな感じ。
「まず、お皿を急いで運んで。それから、食器棚の移動。窓に鉄格子をはめて」
「鉄格子?」
当然のように言うサラに、俺は問いかける。