「明日は何だっけ?…歴史?この王国の歴史知ってどうするよ」
俺は、歴史には自信がありそこら辺の教師より詳しい。
レベッカは、白くて長い指をならしながらすぐ近くの壁に背中をあずけた。王太子殿下の信頼を得た、身辺警備の騎士といえどもやはり主と一緒では気がぬけないのだろう。
物心ついた時からいつも見ているレベッカの癖を、俺は見逃さなかった。
「おい、レベッカ。それやめろよ…剣!!」
レベッカの癖というのは、左腰につけた剣に手をかけてしまう事だ。本人は無意識だろうが、こっちとしては非常に怖い。
レベッカの剣は、俺と一緒のもので幼い頃からずっと握っていたものだ。
だが、さすがに俺達も成長し今では腰に差しているだけで、訓練の時はもう一本の剣を使っている。
腰の飾りとなった剣の名は、『ウィード・ガウン』。この国の言葉で、『さだめられた運命』という意味だ。
『ウィード・ガウン』については、全てが謎でどこで誰につくられたのか、また何故2人が持っているのかさえも分からなかった。
ただ、この柄に手をかけると気持ちが落ち着き、ある風景がうかぶ。