「え、なに…」

思わずたじろぐ。

「一口」

私の手を掴んで、グイと自信の口まで運ぶタク。

「言えば普通にあげるのに」
「それじゃ面白くない」
「面白くないって…」

なんじゃそりゃ。

「じゃあ、タクのも一口ちょうだい」

あーん、と口を開ける。

「いやお前もやってること変わらねえじゃん」

タクはでも楽しそうに、私の口にかき氷を運んでくれた。

「甘さ控えめ?」
「…つーかシロップなんて色違いなだけで、味はほとんど変わらないって」
「そういう身も蓋もないこと言わないの」

白けた目で見るタクの肩をバシンと叩いて、祭りの熱狂に浸る。
せっかくなら、そんな野暮なことは忘れて、楽しみたいじゃないか。

「沙穂は、俺らのことどう思ってる?もう家族になったか?」

俺ら、の言い方に含みを感じて、コクリとうなずく。

「タクもシンも、他人ながらに良い感じに同居生活できてると思うよ」
「そうか。なら、良い」

ホッと安堵したような顔に、思わず問いたくなる。
タクは私のこと、どう思ってる?家族みたい?
家族ならなんでもないであろう、さりげない間接キスに、私ばかり意識していたなんて、死んでも言えない。

「そろそろ花火の時間だな」

時計を見れば、もうすぐ8時。

「絵梨に、絶景ポイント教えてもらったの」

食べ終わったかき氷の入れ物を近くのごみ箱に入れ、まずは大通りを目指す。