濃紺の浴衣は、少し背伸びしすぎたかな?なんて心配だったけど、杞憂だったらしい。

「花火見る前に何か腹ごしらえしないか」
「実は私もお腹空いてたの」

左右にひしめく屋台を見回せば、焼き青そばにフランクフルト、チョコバナナに冷やしキュウリと、食べ物の屋台ばかり。

「何食べる?」
「うーん…暑いからかき氷!」

私が選んだのはいちご、タクはブルーハワイ。
400円と、強気の屋台価格。
そして私の財布には1,000円札しか入ってない。

「タク、悪いけど私がまとめて…」

と言いかけた時にはすでに支払いが終わっていた。
…怖さすら感じるよ⁉え⁉

「ちょっと!何勝手に払ってるの?」
「後ろ詰まってるし」

ちらりと私の後ろに視線を投げたタクは、そのままスタスタとかき氷を持って、近くのベンチまで移動する。

「さっきのお金」
「お前な…少しは顔を立てることも覚えたら?」

差し出したお札は、手厳しい言葉とともにグイと突き返された。
相変わらずずるい人。
何も言い返せずに、ムスッとかき氷をほおばっていたら、タクがじっと私を見てることに気づいた。