「お邪魔します」

変に律儀に挨拶なんかして、傘の中に入る。

「貸して」

タクのほうが言わずもがな背が高いので、持ち手を渡す。

「そっちの肩、濡れてない?」
「大丈夫。タクこそ、濡れてない?」
「遠慮して風邪ひかれても困るんだけど」

半歩分近づいたタクの肩。
その距離に、胸が詰まる。
なんで相合傘なんか。
自分で言い出したくせに、耐えられなくて公開。
嬉しくて辛いなんて、知らなかった。

「美穂さん帰ってるなら、風呂沸かしてもらって入ったほうがいいよ」
「わかった」

心配性すぎるとも思うけど、好意はありがたく受け取っておくことにした。