なんでうちに?

「お客さんは違うかな。この2人には、今日からしばらく居候してもらうから」

…居候??

「えっ、えっ、えっ?」

お母さんと島本兄弟を代わる代わる見やる。

「…よろしく」
「また会えたね」

なんで2人ともそんな普通なの?え?

「親が海外転勤になって、知り合いの香さんが引き取ってくれるって言うから、お言葉に甘えて」

ニコッと笑う弟は可愛いけど、お言葉に甘えすぎてない?

「…もしかして、転入してきたのも…」
「そ。この家から通える高校だから」
「そういうわけだから、美穂、沙穂、よろしくね」

台所でご飯の準備をしてるお姉ちゃんにも声をかけて、お母さんはコートと鞄を手に取る。

「あんたがなかなか帰ってこないから、すっかり遅くなっちゃったわ。じゃ、これからまた会社戻るからよろしく」

お母さんが夜遅いのは今更だ。無理して抜けてきたのだろう。

「あ、うん。頑張って」

お母さんを見送ると、一気に静かになるリビング。

「拓也と信也ね。家事担当は私だから、なんかあったら言って」

お姉ちゃんがお皿を運びながら、2人に伝える。
今日のメニューはカレーだ。

「あと、部屋は拓也が沙穂の隣、信也が沙穂の向かいだから。荷物、早く解いてね」
「はぁい」

お姉ちゃんったら、会ったばかりなのになんだか遠慮がない。
すごい。

「…2人のこと、なんて呼べばいいかな」

一方私は、まず呼び方すらわからない状況。
我ながら姉との差が酷すぎる。

「なんでもいいよ?僕は沙穂ちゃんって呼ぶけど」

えっ、そう言われると、悩む…。

「シン…とか、どうかな」
「じゃあ兄さんはタクだね」

タクとシン。新しい家族が増えた。