6月。
毎日窓の外はどんより曇っていて、今にも落ちてきそうなほど低い雲と、ポツポツと降り始める雨が常の光景。
折りたたみ傘が手放さない。

「止まなかったね」

絵梨が昇降口で傘を広げながらため息をつく。

「ねー。ジメジメしてて嫌になる…」

湿気でベタつくワイシャツが不快だ。

「早く帰ろ」
「どうせ待ってても止まないもんね」

止むどころか、天気予報はこれから夜にかけて、雨脚がひどくなるとさえ。
至るところにある水たまりを避けながら、道路の端を歩く。

「…濡れたね」

大通りはどんだけ気をつけていても、車からの水がかかる。

「足元ぐしょぐしょ」
「梅雨最悪」

特にトラックみたいな重い車は、よくはねる。
スピードを落として気をつけてくれる車もいれば、そのまま走り去る車も。
絵梨と別れて、足早に帰宅。

「ただいま」
「沙穂ちゃんおかえりなさい」
「シン!?」

いつも部活で遅くなるシンが、なぜかリビングに。

「なんでこんなに早いの?どうしたの?」
「って、どうしたのはこっちのセリフだよ!なんでそんなにずぶ濡れなの!」

ぐいぐいと背中を押され、洗面所に押し込まれる。
「え、え、ちょ、なんっ」
「か、鏡みて!」

バタン、と勢いよく扉を湿られてしまった。
いきなりなんなの、と思いながら言われたとおり鏡を見る。

…なるほど。
湿気と汗と先程の車からはねた水で、ワイシャツから、中に着ているキャミが透けていた。
シンに悪いことしたなあ。
あとで詫びなくては。

「…シャワー浴びよう」

せっかくだし、気持ち悪いし、とはらりとワイシャツを脱いだところで、ガラリと扉が開いた。