食べ終わってから向かった先は、映画館。

「今なにやってたっけ・」

じゃん、とタクが懐から出したのは、私がハマってる俳優さん主演の映画。

「え、ってかタクもこの人好きなの!?」
「こないだ沙穂の部屋に行った時、チラッと見えたから。あれは男から似てもカッコ良い」
「だよねえ!実は絵梨と話してたんだけど、都合つかなくて。一人で来ようかと思ってたんだー」

一人映画も嫌いじゃないけど、せっかくなら感想語りたいし、同じ気持ちを共有して盛り上がりたい。

「良かった。んじゃ、行くぞ」
「待って待って、チケット代!」

鞄から財布を取り出す。

「上映時間迫ってるから早く」
「え、ちょっと!」

押し切られてしまった。
ちょっとモヤモヤしながら、席に着く。
あっという間に暗くなる場内。
本当にギリギリだったみたい。

「交換するか」
「え?」
「こっちのが真ん中寄りで見やすいだろ」

暗くなり始めた場内で、迷惑にならないようにコソコソ話すタク。
音量が小さい分距離が近くて、いやに緊張した。

「あ、ありがと」

大好きな俳優さんが主演なのに、微かに感じる隣のタクの気配に、ずっと集中できなかった。