選んだのは、シフォンスカートにブラウス。
歩きやすさを考えて、ヒールは3センチのパンプス。
眉を整えて、耳には揺れるイヤリング。
ショートの髪は緩く巻いて、ハンドバッグを手に玄関へ。

「あれ?沙穂ちゃん、出かけるの?」

ちょうど階上から降りてきたシンが、私を見て少し驚く。

「うん」
「そう。すっごく似合ってる」

にっこり笑った顔に、つられて私も笑顔になる。
相変わらずシンは可愛らしい。

「ありがとう」

タクはすでに玄関の外で待っていたみたい。

「ごめん、お待たせ」
「いや」

軽く頭を振って、歩きだす。

「髪、いつもと違う」

ふわっとタクの手が触れる。

「変、かな…」

言われた途端に自信がなくなってくる。
普段巻いたりしないから、下手くそなのバレてたりして。
下手にいじらないほうが良かったかも。
ぐるぐる考え込んで不安になる私に、タクは優しく笑いかける。

「似合ってる」
「…ありがとう」

シンに言われた時はあんなに素直に喜べたのに、今は恥ずかしさの方が増す。
タクの手が、そのままイヤリングに触れる。

「意外。こういうの好きなんだ?」
「あ、うん。あんまり可愛いの、ガラじゃないって分かってるんだけど、つい一目惚れで買っちゃったの」

お洒落な絵梨と買い物に行くと、影響されて可愛いものに目が行ってしまう。
絵梨みたいにパッとした顔立ちじゃないし、あんまり似合わないんだけど、つけてるだけで可愛くなった気分になれるから。

「ふうん。沙穂って結構自分のこと分かってないよな」
「え?」
「あ、電車きた」

改札を抜けたタクは、タイミングよくホームに滑り込んできた電車に乗る。
そのまま会話は流れてしまって、続きを聞くことはできなかった。