「あら、もうこんな時間!」

ふと店内の壁掛け時計を目にしたありさが、慌てて帰り支度を始めた。

「新学期早々帰りが遅いって叱られちゃうわっ! 美空、わたし行くわね」

ありさに続いてあたしも立ち上がり、後ろを着いて歩いた。

「気をつけて帰ってね、また明日ね~」

「うん、お見送りありがとう。また明日」

お店の前で手を振って振り返して、いつもの別れ際の挨拶をした。

歩きだしたありさを見送って、お店に戻ろうとドアに手をかけたところだった。

「あ、美空、ちょっと……」

立ち止まったありさに呼び止められて、何かなぁと彼女に手招きされるがまま、近づいた。

「彼、なんだか美空に本気っぽい。

運命とか言ってるし、美空に一目惚れかも? まだ店内にいるし、気をつけてね」