主人公のライバルの名前はドロシーにしよう、そんなことをカミーユが考えながらペンを走らせていると、「ミーナ先生!できました!」と生徒の一人が椅子から立ち上がってミーナに書いた小説を見せに行く。

「早くない?」

「きっと短編なのよ」

カミーユの周りでそう何人かが話す。ミーナがどんな指摘をするのか、カミーユはドキドキしながら小説を読むミーナを見つめた。ミーナの顔はどこか険しい。

「お前、きちんと小説を読んだことがあるのか?」

ミーナの問いに生徒は「えっ?」と聞き返す。ミーナは小説を生徒に渡して言った。

「ストーリーや個性的なキャラクターの登場はいいと思う。だが起承転結がめちゃくちゃだ。そこを意識しろ。このレベルでは小説家デビューはまだまだ先だな」

「は、はい……」

生徒は俯きながら席へと戻る。教室に入ったばかりで落ち込んだその子を見て、カミーユもあたしも入ったばかりの頃はあんな感じだったなと懐かしく思う。ミーナは小説に対して強い情熱を抱いている。だからこそ、誰に対しても厳しいのだ。