「はい、すんません。」

プンスカする担任の藤咲は清依を見上げてさらに続ける。

「一年なんだから、しっかりしいへんと。友達もええけど他も大事にね?」

「はぁい。」

清依が首を同じ動作しか出来ないおもちゃみたいにペコペコ折り続けていると、気が済んだのか藤咲は清依の肩をポンと叩いて「気をつけてね。」と言った。
解放された清依は自分の席に戻るなり衣奈と恵里香に泣きついた。

「衣奈ちゃん、恵里香〜、もう怒られてもぉたんやけど。」

「小竹がアホだからじゃん。」

「そうだよ。初日からHR飛ぶなんてありえんよ。」

ガックリする清依は長めの髪を耳にかけて「それより。」と態度を反転させた。

「これからカラオケ行くんやけど二人ともどう?」

「え?」

恵里香はパッと顔を輝かせた。

「今から大部屋予約すんねん。やからどんだけ入れるやろー、20いけんのかな。」

「そんなに?!」

恐ろしい人脈。
恵里香はともかく衣奈は知り合いもいないカラオケに少なくとも気乗りはしない。

「テキトーに岡高の一年の来れる奴らに回してんの、来るか来んかはどっちでもええから一応場所送るし連絡先教えてくれへん?」

「ええよ。な、衣奈。」

「うん。」

衣奈は頷いたものの、ふと南の事が気になった。
南の席の方に目をやるとクラスメイトと話しているようで、衣奈は安心して清依と連絡先を交換した。

「んじゃ、またなぁ。」

清依は二人の連絡先を聞くなり、教室を出ていった。

「どうする?うちらで取り敢えず時間潰しとく?」

「そやね。」

衣奈は返事をすると行く気満々の恵里香に合わせてスクールバッグを持ち上げた。
高校生ってこんなものなのかなと、胸が昂った。

メイクポーチ持ってきて良かったなと思いながら席を立って恵里香についていく途中で談笑している南の席の前に立った。

「南、先行くな。」

「おー。また明日。」