「もー、よく分かった。」

「な、なに?」

「絶ッッ対に岡高に負けへんわ……一度たりとも勝たせへん。」

ギラギラとした圭兎に気圧されて南ですら「おう。」と返事をした。
普段通りなら「アホ抜かしとんな。」や「呆れてものも言えんわ。」くらいは言える筈だ。

圧倒されている場合ではない、ここは男らしくビシッと……と思う衣奈の手を圭兎はギュッと握った。

「そんで青蘭来てもらう。」

「無茶な。」

衣奈が首を横に振ると圭兎は下唇を持ち上げて表情を曇らせた。

今更どうしようも無いということは圭兎もよく分かっている上でのワガママだ。
言うだけタダと言うやつ。

「諦めろ、土屋。」

「南に言われんのは心外やわ。帰ろ、衣奈。」

そう言ってごく普通の流れで衣奈の肩を抱くが南がセーラー服の襟をグイと引いた。

「アホ、お前だけ逆方向や。大人しく帰れ。」

圭兎は「ずるい!」と吠えるが南はお構い無しに背を向けた。

「ほな。」

「あ、またね!土屋くん。」