「本当に岡高って野蛮やで?見た事あるやろ応援。」

「あるよ。」

一度地区予選で見に行ったことがある衣奈は、その時の罵詈雑言と言っても過言ではない応援を思い返した。
それが伝統らしいから仕方ないのだ。

南が行くというのだから仕方ない、衣奈はそう思った。
まぁ、少しばかり頭が足りず岡高と数校しか選択肢が無かったのだが。

「はァ……お前な、コイツは自分で決めてんで?ちっちゃい事を後からグチグチグチグチ……うっさいねん。」

「嘘や、自分なんかしたやろ。」

「はァ?」

「してへん!私が決めた!そんな言うんやったら土屋くんが岡高来ればええやんか!」


そう言うと圭兎はピタリと口も身体も動かなくなった。

衣奈は言った割に、岡高はお上品な圭兎に似合わないなぁと思っていた。
バスケやっている割に男臭い感じが似合わないし、マネージャーがいないバスケ部だと爆発しそうだ。

それに、南と圭兎は同じチームと言うより互いに敵同士であるのがピッタリだと思った。

「す、推薦貰ってもーたやん。はよ言ってくれたら考えたのに……。」

「でも、岡高嫌なんやもんな。」

「ウン。岡高のバスケ部ムサそうやし、南おるから。」

「おいコラ。」

「それに僕、岡高でプレーしたくない。南おるから。」

「呆れてもう言葉もでぇへん。」

南と圭兎はミニバス時代は一緒だったが、かなり揉めていた。
南が血の気が多い分、圭兎の煽りを真に受けて我慢出来ずに手が出てケンカする事が多かったのだ。

二人と同じチームだった衣奈は二人の犬猿さはよく知っている。
中学で南と圭兎が離れてライバルになると、衣奈はそれが一番お似合いの関係だと気がついた。

バスケは圭兎の方が上手い、南より数歩先にいる圭兎を追いかけている関係がとても二人にとって良いのだ。


なんて衣奈は勝手に思っている。