HoneyとBunny

圭兎に恵里香が会いたいと言っている旨を伝えるとスマホを常に見ているのか秒速で返信が返ってきた。

「ええよ、だって。」

「まじでぇ?!いついつ?」

「あー、バスケあるからなぁ……どやろ。」

また聞けば、まるでその場で会話しているかのようにすぐに答えが返ってくる。

「金曜やったら練習ないから会えるって。」

青蘭はインターハイ常連高だ。
部活に休みがあるなんて意外だと思いつつ、金曜日に会う約束を取り付けた。

清依はと言うと呼び出されて廊下で談笑している。
相変わらず自由で楽しそうだ。

「金曜ちょー楽しみなんだけど。」

「小竹くんはいいの?」

「え?なんで小竹?
あぁ、小竹は鑑賞に限るね。あと土屋くんも同じだよ、衣奈の男取るわけないし。」

「だーかーらぁ……。」

衣奈が大口を開けて否定すると恵里香は笑って衣奈の頭を撫でた。

「あはは!わかってるってぇ。」

「ホントかなぁ……。」

項垂れる衣奈は眠る南と同じ体勢で机に突っ伏した。

「ホントホント。」

恵里香が衣奈の髪を弄っていると何故かさっきよりも制服がだらしなくなった清依が戻ってきた。

「ふぃ〜。」

「小竹どうしたん。」

「プロレス始まったから逃げてきた。」

「アホや……。」

「恵里香、衣奈ちゃん。ゴム持ってへん?髪結びたいんやけど。」

「ん。」

恵里香からゴムを受け取ると、肩を掠めるくらいの髪をハーフアップの要領で束ねた。
キリッとした印象に変わり、あまりに独特な雰囲気を醸し出すものだから芸能人か何かと見間違う所だった。

「俺、髪結ぶとカッコイーって言われんだよねぇ。」

「自分で言ってやんの。」

「カッコイーっしょ。」

ニィッと笑う彼は机に突っ伏する衣奈の頬を指先でつついた。

「まぁまぁかな。」

「衣奈ちゃん手厳しー。ねぇねぇ恵里香は?」

「衣奈に同意。」

「ヤバ、コイツら土屋クンに毒されてら。」

清依はギャハハと笑うと立ち上がって「俺カッコイーよなぁ?」と教室内に響くように間抜けな事を言い始めた。
教室にはクスクス笑う声や「カッコいーぞぉ。」「イケメン小竹〜!」とヤジが飛んだ。

「ほれ見ろ、これが民意だ。」

「アホや小竹。」

「あれ同情票やから。」

二人でそう言うと清依は下唇を突き出して態とらしく拗ねて見せた。