「んじゃあ、また明日も学校とゆーことで今日は解散!」

清依のひと声で親睦会的なカラオケは終わった。
二人はさっさと人混みを離れ、恵里香はようやく息が出来たようだった。

「あー、調子乗った。みんないい子やったけど、初メンであれはキツイっしょ。」

「私も疲れたぁ……。でもなんか高校やってけそーじゃん?」

高校生活は思ったよりも楽しいかもしれない。
衣奈は胸が弾むような期待感で満たされていた。

「衣奈、何番線?」

「うち4番。」

「あちゃー、真逆やな。んじゃまた連絡するわ。」

「うん、バイバイ。」

改札をくぐり、4番線へ向かう途中彼女は思い出した。

土屋くんに連絡返してない!

慌ててスマホを見るとメッセージがこれでもかと並んでいた。
衣奈は頭を抱えてメッセージを見ると『僕らもう終わるで〜。』『なんでメッセージ見てないん〜。』最後には『岡高の最寄りで降りた。』と二分前に送られてきていた。

「うそ!」

衣奈は慌てて電話を掛けながら、4番ホームに続く階段を下った。
すると、ホームのベンチにやけに姿勢が良い青蘭生が座っていた。

「土屋くん、何してんのよ!」

息を切らしながらスマホを耳に当てる土屋くんの前で仁王立ちした。

「え、衣奈……?」

「連絡返さんくてごめん。」

「衣奈、むっちゃ可愛い。ブレザー有り得んくらい似合う……やばい。」

「は?」

黒に近い紺色のブレザーに暗い赤色ベースに白の斜線が入ったネクタイ、いかにも頭の良さそうな青蘭の制服は圭兎によく似合っていた。

前に立つ衣奈の腰に圭兎は手を回してギュッと抱きしめた。

「や、ちょっと!やめてよ!」

「衣奈〜可愛えぇ〜ほんまに可愛……。」

圭兎の頭を押し返して身体から離すと、乱れたサラサラの茶髪が形状記憶でもしてるのか綺麗に元に戻った。

「なぁ、写真撮ってもええ?」

「えぇ、いやや。」

「一緒に、入学記念、な?」