その後のことはよく覚えていない。いや、思い出したくなかった。

彼の奥さんの話で、盛り上がるクラスメイト。ノイズのように、ザワザワと騒がしく耳障りな声。

それからというもの、クラスメイトの女子に話しかけられるも、楽しく話をすることなどできず、ずっとどこか上の空。

そして何よりも悲しかったのは。その後にの出来事にあった。
同窓会も終わりにさしかかろうとした時、私の様子に見兼ねたのか、颯汰くんが麗央くんに、私が話があるからと呼び出してくれたのだが.........。

「麗央くん、結婚したんだね!おめでとう。」
「あー、うん。ありがとう。」
「それよりさ...『あんた、誰??』」
「え...。」
「俺、あんたのこと知らない。いたっけ。」
「お、覚えてない!?2年の頃同じクラスで隣の席にもなったことのある!蒼唯だよ!神崎蒼唯!」
「...しらない。それで、俺に何か用?」
その言葉に耳を疑った。彼は、私のことを何も覚えていなかったのだ。いや、まるで記憶をぽつりと抜いているかのような...。睨みつけるような冷たく冷酷な目に、今までに聞いたことの無い低い声。初めて恋に落ちたあの日とは違う。嘲笑うかのような。そこにいたのは、彼そのもののはずなのに。まるで別人で、あの日の面影はまるでなかった。



その姿に私は、なにか切れるような音がした。もうあの日々に戻ることはできないのだと、嫌でも悟ることしか他なかったのだ。