『結婚』...?
え、今なんて。
私の聞き間違え?
なに、え?
その言葉の整理がつかぬまま、今の言葉が嘘であって欲しいと思った。夢であって欲しいと思った。
「け、結婚したの...!!!?」
自分でも想像以上にでかい声がでて、体がびくついてしまった。私の声は本当にでかかったようで周りの視線が一気に集まった。
その瞬間、いたたまれない気持ちで押しつぶされそうになった。
「蒼唯ちゃん、驚かせてごめんね。実は、そうなんだ。1年半前に結婚したんだよ。さっき伝えようとしたんだけど、伝えそびれちゃって。」
誰か結婚しているかも。そう思ったけど、それがまさかあの人だなんて、思いもしなかった。当時は恋愛にも疎そうだったし、度々告白されていたがすべて断っていた。恋愛そのものに興味を示していなかった。
なのに...
彼が結婚?絶対にないと思ってた。思いたかった。私の知らない彼がまたひとつ増えてしまった。
一瞬で時が止まったかのように思えた。蜘蛛の巣にでも引っかかったような感覚。1歩も動けないでいた。


そんな時
「悪い、遅れた。」
そう言って彼は現れた。





一ノ瀬麗央(いちのせれお)は現れたのだ。