頭は恐ろしく冴えているのに
沸き立つ苛立ちを抑えられない

蛇に睨まれた蛙のようにガタガタ震える二人と

未だに探ろうとする目をする
桧垣さんの前に立ち


「私の手を引いてたのに気付かなかった?」


胸にトンと触れるとゆっくり移動する


「・・・っ!」


「ボンヤリしてたの?」


左肩に触れる


「・・・っ!」


「悪口が聞こえるって不幸よね」


背中に触れる


「・・・っ!」


「ねぇ?聞こえてる?」


右肩に触れると正面に戻って向き合った


「・・・ヴッ」


膝から崩れ落ちた桧垣さん


「愛」


兄が動こうとするのを手で制した


・・・気付かれたか


桧垣さんの身体に触れて
急所を突きながら動きを封じた

余程訓練されてないと
私の動きに気付くことはない

忌々しい二人は更に強く!と思ったところで。


「どういうことだ!」


背中から打つかったのは遅れて到着した組長の声


「・・・チッ」


・・・やり損ねた


蛙のように地べたに沈んだ桧垣さんを見ながら


「愛、説明しろ」


正面に立った組長


「私の悪口を言った二人と
躾の出来ない親の処分中」


「ブッ、ハハハ」


何がおかしいのか大きな声で笑い始めた組長は

一頻り笑うと


「愛、好きにしろ」


それだけ言うと私の頭を撫でてホテルの中へと入って行った


立っていられないほどフラついた二人
に視線を合わせると


「颯っ!」


襲名披露から姿を見ていないけれど
間違いなく近くで控えているはずの名前を呼んだ