「颯は姫ちゃんのことが好きなのね」


「え?颯は護衛ですよ?」


「姫ちゃん・・・鈍感」


「橙美さん変なの〜」


噛み合わない話をお庭が見える部屋でお茶菓子がなくなるまで続けていた

さっきの部屋に置き去りにした颯は
固まったままなのか?ここへは顔を見せてない


「そろそろお客が来てるみたいよ」


遠くで車の音が聞こえる
止まって、ドアの音がして
また発進する音・・・

断続的に聞こえるそれは
客人の多さを物語っていて

これから始まるであろう
新しい時代に向けて背筋を伸ばした





どれくらいの時間が過ぎたのか
廊下側の襖がスッと開くと
紋付袴姿の兄が顔を出した


「姐さんお世話になりました」


橙美さんに丁寧に挨拶すると


「愛、おいで」


いつものように甘い顔をした


「姫ちゃん、いってらっしゃい」


優しく微笑む橙美さんに
軽く頭を下げると
兄に手を引かれて部屋を出た


「戸が開けられたら中へ入って碧斗の隣に立つように」


急に纏う空気を変化させた兄に
襲名披露が行われる大広間の廊下に置き去りにされた