翌朝


目覚めると身体が金縛りに遭ったように動かない

それが背後から颯に抱きしめられた所為だと理解するのに数秒を要した


「・・・チッ」


キングサイズのベッドだからと
端に寄って寝たはずの颯が
背後から手を回して脚を絡めている


・・・こいつ抱き枕と間違ってる


腹が立って後頭部を颯に打つけた


「・・・ったぁ」


寝ていた颯の鼻にクリンヒットした私の後頭部のお陰で

腕が緩んだ隙に抜け出そうとしたのに
 

「・・・ヴッ」


逆に強く抱きしめられてしまった


「ちょっと、苦しい」


「あ?あ〜悪りぃ」
 

状況を確認して腕と脚を解放してくれた


「あんた今夜から床ね!」


「え?ヤダ!愛と一緒が良い」


「なんでアンタの腕の中で
目覚めなきゃなんなのよっ!」


「だって暖かかった」


ブンブンと尻尾を振る颯に


「懐くな!犬!」


捨て台詞を吐いて寝室を出た


リビングのソファを見て
昨日の兄を思い出した

私を宥めながら
田嶋の陰としての家業の話をした

大澤碧斗が主、私が従
どんなに理不尽なことでも
主がすることは絶対

陰として生きる道

その歯痒さを話す兄に
頷きはしたものの

所詮陰から抜け出した兄の言葉

1ミリも心に響くことはなく
ただ淡々と受け止めた