龍神会の不穏な動きを統制するのが若頭?

少し芽生えた疑念は
現在の大澤組は大澤碧斗が組長になるまでの繋ぎの組長だったことを思い出して消した


「絵面を教えてもらってないと味方になるかどうかは答えられないわね」


意地悪で出した言葉に背後の兄の身体が強張った


「愛は自分で探るのが好きだと思ったから」


確かに絵面は無くても全貌把握は容易にできる

それでも・・・


「立場を理解してる?」


低く落とした声に
目の前の颯が目を見張った


「愛」


クルッと横抱きにされ
兄と視線を交わす

利害関係は私自身が決めること

それは次期組長の依頼だとしても
気に入らなければ切り捨てる

更に、不利に駒を動かす

それくらいのことは容易い

だからこそ安売りも媚も無し
それが分からなければ
解らせるまで


「愛、なにを怒ってる?」


「なにも」
 

本当はこの要塞の居心地の悪さに
心底腹を立てている

颯と同居することになったことも
不都合が増えることも

なにより明日田嶋の本家に呼ばれていることも

龍神会を潰してやろうかと思う程
怒っているのだ


「・・・っ」


気づいたか

負のオーラを立ち上がらせた私に
敏感に反応する兄は


「すまない愛」


横抱きにしたまま抱きしめた


「すまない」


何度も首筋にかかる兄の声に
無反応を決め込んだ