どのくらい外を眺めていたのか


ひんやり冷たい手摺に寄りかかっていると


「愛」


部屋の中から尋の声がした

何気なく振り返った刹那
息を飲んだ





「・・・っ!」





冷蔵庫からミネラルウオーターを取り出している尋

上半身裸のその背中に

鋭い眼をした龍がいた


「・・・・・・え」


零した声が酷く掠れる



龍が見つめるその先に牡丹

息を飲む程の綺麗な赤に
瞬きを忘れた


LーDragonを作った後で
龍のことは聞いていた

でも・・・
牡丹のことは・・・?


手繰り寄せても
・・・思い出せない

なによりそれを見た所為で
頭に浮かぶのは一平に作って貰った着物

牡丹を見ると思い出すのは
あの鮮やかな着物


ミネラルウオーターをゴクゴクと飲み干した尋と視線が交わった


「どうした」


呆然と立ち尽くす私に気づいて
こちらへ来ると窓のところで立ち止まった尋は

部屋の明かりを背に受けて
表情が見えない


「・・・いや」


なんでもないと続けようとした口が
どうしても開かない


「愛?」


騒つく胸を
どう表現して良いか分からず

そのまま身体を反転させ尋に背を向けた


「愛?」


繁華街の揺らぐ灯りを見ているつもりが
此処に居ない一平がどうしているのか気になって

騒つく胸が焦点も奪った


「愛?」


逃げ出すことも出来ず
尋を見上げると

不安そうに揺らぐ瞳が見開いた


「愛っ」


「・・・っ」


呼ばれると同時に腕の中に抱き寄せられた

トンと尋の素肌に触れた頬が濡れている



「どうした・・・愛」



涙の理由は言えない

腕の中で聞いた尋の声がいつもより低くて

ゆっくり撫でられる頭と背中も心地よくて

高揚する感情が抑えられず溢れ出した