それよりもどうにか少しでも食べないとと
お好み焼きを半分食べた所為で胃が痛い
早く帰って横になりたい
そう思ったタイミングで
「どうした」
手を引いていた尋が立ち止まった
「エル?」
首を傾けて顔を覗き込んだ尋
散々『食べる量が少ねぇ』と追い立てられたのに
苦しくて胃が痛いなんて言えないから
「・・・眠い」
誤魔化すように視線を合わせれば
間近の顔が破顔した
「フッ、仕方ねぇ」
「え?」
「「「キャー」」」
気づいた時にはフワリと身体は浮いていて
お姫様抱っこされていることに気づいた
「大人しく抱かれてろ」
恥ずかしいと言う口を封じる尋の声に
諦めて首に手を回した
取り巻きのギャラリーから悲鳴が上がるけれど
完全無視の四人組
しばらくは顔を背けていたけれど
気持ち悪さの限界と程よい疲れに
いつしか意識を飛ばした
。
「起きたか」
「・・・うん」
頭をくしゃくしゃと撫でられ
だんだん意識がハッキリする
「尋の部屋?」
「ん?あぁ」
寝ているベッドから
尋の香りがする
「巧達は?」
「隣」
「そっか」
繁華街の駅前に建つタワーマンションの最上階の二部屋が双子の住まい
中学生の頃に事故で亡くなった両親の遺産で購入したものらしい
雰囲気は逆だけど
兄が巧、弟の尋
出会った頃は既に此処に住んでいた
幼馴染の美容師の鈴木聖《すずきひじり》
双子の後見人で叔父の森本忠《もりもとただし》
双子の関係者では
その二人以外会ったことは無い
いつもLーDragonの面子と連んでいる双子は
私なんかよりずっと深い闇を抱えているかもしれないと思った