・・・強い


やり合っている訳ではなく
一方的な喧嘩


「二対・・・大勢ですね」


隣に立つ奥野も
事の成り行きをジッと見つめている

見ている間に敵はどんどん数を減らし
足元に倒れたまま動かない


「あれ、こちらが探ってた例の奴らですね」


「・・・そう」


どこかのチンピラが南の街で騒ぎを起こしている

そんな情報を掴んで始末してきたのに
後から後から沸いてくる雑魚に
手引きをしている奴が分かったと
奥野から連絡が入った

それ絡みという訳か


「アレは知ってる?」


一方的にそれらを潰している二人


「いいえ、知りません」


「そっか」


潰す手間が省けたから
お礼の一つでも言いたいところ

身元のしれない輩に近づくにはリスクが伴う


「愛様はここで」


終わったら話をつけるという奥野に
小さく頷くと残り僅かになった喧嘩に視線を戻した


「あと三人」


大して強くない男達でも
数が多いとそれなりに体力を消耗する

順当にいけば間違いないと思ったのに

間合いを図る敵の一人の背中に
キラリ光を放つナイフを見つけた


・・・不味い


あり得ない程冷静な頭と裏腹に
制御できない身体が

気付けば動きだしていた


「愛様っ」


背中に聞いた奥野の叫び声に
五人の男達が一斉にこちらを見た






「雑魚がっ」