残してきた尋のことが気になって
目の前の洋服に集中できない
「なぁエル?金髪ギャル辞めねぇ?」
隣に立つ巧が偽金髪に触れる
「だって変装だもん」
「変装は分かるけど趣味悪すぎ〜」
ククっと笑う巧につられるように
海輝と圭介も笑う
その3人の笑顔に付かず離れずの距離を保っていたギャラリーから甘い歓声が上がる
「どっちにしても目立つから移動」
尋を置いてきた方向をチラッと見てから
また歩き始めた
「入れ食い?」
「は?」
「これだけ囲まれると食べ放題?」
「あ〜」
話の内容を理解した巧が
苦笑いしながら頭を掻いた
「彼女は?」
「足手まとい」
「でも、もう引退じゃん」
「引退したら作る・・・かな」
尋より軽いノリの巧はチャラい
颯と重なる部分が多くてわかりやすい
双子は私と同じ高校三年生だから
年末には総長の座から引退することになる
海輝と圭介に受け継がれる
LーDragon
「あと半年・・・か」
。
双子と出会ったのは二年前
南の街に潜らせていた奥野慎太郎からの連絡を受けて
お忍びで繁華街を歩いていた時だった
少し奥まった場所にある
薄暗い公園から聴こえてくる声に
珍しく興味を持った
「愛様、いけません」
何度も止められたのに
凄まじい音の主を見たくて
気配を消して近づくと木陰から覗いた
「・・・っ」
遊歩道の脇にある木立の中で
十名足らずの男達が喧嘩していた