深夜遅い時間なのに
お風呂の用意までしてもらって

至れり尽くせりの中で
懐かしい香りに包まれながら
橙美さんの隣で目を閉じた











「・・・ちゃん、姫ちゃん」


「・・・ん」


目を開けると間近に橙美さんの顔があった


「ずっと寝かせてあげたいんだけど・・・お腹空いてないかな〜と思って」


お茶目な笑顔を見て
うーんと背伸びすると
布団から起き上がった


「・・・うそ」


壁の時計は午後2時を過ぎている


「よく寝てたから起こさなかったの」


「いえ、すみません」


人様の家でどんだけ寝る気だ

ダイニングで待ってると言い残して部屋を出て行った橙美さん

手早く着替えると長い廊下を急いだ


「おはようございます」


ガランとしたダイニングに
私の声だけが響いた

キッチンとの仕切りから顔を出した橙美さんが


「座って待ってて」


暖簾の向こうへ消えた

既に朝も昼も食事の時間は過ぎていて
私一人のための仕度が申し訳ない

橙美さんと道端さんの二人で綺麗に並べられる朝昼兼用の食事が懐かしくて頬が緩んだ


「美味しそう」


目の前に座った橙美さんとお喋りしながら食事を終えると

‘お庭のお散歩しましょ’と誘われて外へ出た

昨夜とは打って変わって見晴らしの良い庭は
子供の頃と変わらず綺麗に手入れをされていて気持ちがいい

昔を思い出してはコロコロとよく笑う橙美さんと鯉の餌やりを始めた時


「姐さん、お客様です」


息を切らした道端さんが迎えに来た