カツカツと近づいてくる足音が止まった
入ってくる足音の主を想像しながら
入り口を見上げると
「・・・っ!」
「よぉ、久しぶりだな」
想像のどれにも当てはまらない人物は
口元を三日月型に緩ませると
当然のように隣に座った
「なに?驚いて声も出せないのか?」
図星すぎてまた固まる
どうしてこの人がここに居るのか?
どうして私がここだと分かったのか?
いくつもの疑問が生まれる中
迷いなくやって来た繋がりを探ろうとする私を見てフッと笑った
「愛のことなら何でも知ってる」
そう言って頭を撫でた大澤紅太
頭の中をフル回転するけれど、この男の情報は思い出せないものばかりだった
生憎今日はポケットに端末が入っていない
そんな私を見ながら勝手にグラスのシャンパンを飲み干すと
紅太の指がオデコに触れた
「シワが寄ってる」
クスクスと笑って眉の間を撫でる指
「理由なんて探るな、俺がお前に会いたいだけだ」
色気があり過ぎて見惚れてしまうような微笑みに
至近距離だということを忘れて見入ってしまう
「愛」
低く囁いた紅太の声を聞きながらも動けずにいる私に
ゆっくりと近づいた顔が重なった
「・・・っ!!!」