その日心が死んだ気がした。
「アネ、モネ、もう晩ご飯出来てるわよ」
コンコン、とノックがして異空間から飛び込んでくるのはいつだって大人じゃないアネがいい。
「アネ、モネ」
「お母さん焦ってるね」
「ハンバーグ冷めちゃうからね」
「アネ、いかなくていいの」
「いいよ、辛いモネのことあっためて、その代わりにハンバーグが冷めるくらい」
コンコン、とノックがして異空間から飛び込んでくるのはいつだって大人じゃないアネがいい。
二人でタオルケットを被って涙する私の肩を寄せるアネ、私はいつかそんなアネになりたい。今はこの傷が憎く、辛く、そしてあの子を二度と好きにはなれないでしょう。もうこの傷も愛せない。いつか薄れ、そんな子がいた、私は傷を過去にする。
瘡蓋は消えなくってもね。痕が残るけどね。これは咎で業なら、この痛みを踏み台に、私はひっそりと歩くのだ。
目を閉じて涙する。心がすう、と満たされる。
「あなたが好き、大好きよ」
ゆめのなか
あの日プリズムの中笑って手を繋いだ、
いつかの私たちが見えた。



