「いっそ死んでしまえ」
世界からいなくなったらきっと心が楽になる。
あなたが世界から消えたら私の心が楽になる。
塞ぎ込んで吐き出した名誉ある汚染と毒、そのどちらも抱えてくすんだ心も青さも傷も、時が忘れさせてくれるならもう二度とあなたを思い出さない。全部なかったことにする。
出逢わなかったことにしよう。
「心で唱えるんだよ、モネ」
ベッドの上に立ち、そのカーテンを指先に引っ掛けた。私の弱さの裏返しは、強い光を放って二度と戻れないあの日の私たちだった。アネ、あなたはあの日の私だ。双子のあなたがいつも強いのではなく、かけ離れて落っこちたのは、私だ。
「いい、毒されちゃいけないよ。
人でなくなっちゃうからね」
この名もなき毒の価値をあなたは知っているだろうか。
黒く落ち窪んだ世界で、誰かを傷つけた過去をずっと悔やんでそれでもあなたは嫌いだと云うでしょう。好きになれないなら忘れて。好きになんかならなくていい、私がずっと嫌いでいるわ。ならせめてあなたは傷ついたまま私なんか忘れて違う世界へ羽ばたけばいい。羽ばたけばいいの。それが出来ないなら、
私があなたからもう、飛び立つ。
「アネ」
「アネ聞いて」
「なあに」
「私大好きだったのよ
その子が本当に大好きだったの」



