荷造りをして 足りないものを 確認して。

詰め終えた ボストンバッグを 

クローゼットの隅に 戻して。


私は 部屋の掃除を 始めた。


夫婦2人だけで 使っている部屋は

いつだって 清潔に整頓してあるけど。


少しの間 家を空けるから…

旅行から 戻って 気持ち良く 使えるように。



これが京一との 旅行だったら…


夫に 絶望して 不倫するなら もっと楽なのに。


京一は 全て 圭介よりも 優れている。

知性も 収入も 人間性も…私への 愛情も。


私も 京一を愛している…


それなのに 京一を 裏切ってしまうのは 何故?


理屈では 割り切れない心を 振り払うように

私は 何度も 頭を振った。


そろそろ 京一は 病院を出る時間かな。

もう少ししたら 私も 買い物に行こう。


京一が 日本を出たら 私は 解放される。


何一つ 私を 束縛しない 京一から…