私は モデル事務所に 妊娠を告げ 退所した。

「おめでとう。でも もったいないなぁ。涼子ちゃん 仕事 乗って来た所なのに。子供産んで 落ち着いたら また ウチで 仕事してよ。」

「ありがとうございます。その時は 是非 お願いします。」


所長の言葉は 嬉しかったけど。

私はもう モデルに戻ることは ないだろう。


やっと見つけた 自分の居場所を

私は 大切にしたいから。


私の妊娠は きっと 圭介の耳にも 届くだろう。


圭介が どう思うか 

気にならないって言ったら 嘘になるけど。

でも もう私には 関係ない。


私は これから 全力で 自分の家族を 作っていく。


京一と一緒に…


もう 迷わないし 寂しいなんて 思わない。

私は 子供を守らなければ いけないから。


圭介も 家族を大切に してほしい。


あの日 私達を包んだ 恐怖を 忘れないで。


誰かを 大切に するってことは

自分を 大切に することなのに。


私は そんなことさえも 気付かなかった。