ボストンの出張から 戻って以来

仕事の仕方を 変えた 京一。


当直の回数も 少なくなったし。

帰ってから 病院に行くことも なくなった。


毎日 一緒に 夕食を食べて。

休日は 2人で 出かけて。


それが 普通の夫婦だけど…


私には 夢のような 時間だった。




私が 体調の変化に 気付いたのは

それから 1ヵ月が 経ってから。


街は ハロウィンが終わり 冬仕度を始めていた。


「あのね。京一さん…私 妊娠したみたい。」

生理が 遅れて ハッとして 検査薬で 確認した私。


京一に 時間の余裕が できて。

私達の スキンシップは 増えていたから

こんなことも 不思議じゃないけど。


「ホントか?涼子。」

京一の顔は 嬉しそうに 歪んだ。

「検査薬だけど。陽性反応が 出たの。」


結婚して3年、京一は 一度も

子供のことを 言わなかったから。

私は 京一の反応が 怖かった。


「良かった!ちゃんと 診察してもらおうな。体調は 大丈夫か 涼子?」

「私…産んでもいいよね?」

「当たり前だろう。涼子は 嫌なの?」

「ううん。私は 産みたいけど。京一さん 子供欲しいって 言ったことがないから。心配だったの。」


京一は 不意に 私を抱き締めた。


「涼子 ごめん。俺 仕事が こんなだったから 子供欲しいって 言えなかった。涼子も 仕事 楽しそうだったし。でも 本当は 子供 欲しかったんだ。」

「そうなの?私 京一さんに 迷惑だと思って そろそろ 子供 作りたいって 言えなかったのに…」

「俺が 働き方改革したから 神様の ご褒美かな?」

「うん。きっと 神様が もう大丈夫って 認めてくれたんだね。」


私は 涙汲んで 京一の顔を 見上げた。


私達は もう大丈夫…


私は 何があっても 迷わない。

京一を 信じて 付いて行ける。