翌日の撮影は 企業HPの スチールモデル。

最近は 紙ベースの雑誌より

Web向けの 仕事の方が 多い。


「今日の涼子さん 肌が澄んでますね。」

メイクさんに 言われて 私は 驚く。


「そうですか?いつもと 変わらないんだけど…」

「ううん。目も 生き生きしてるし。何か 良い事ありました?」

遠慮して 首を傾げてみても

きっと 私の幸せは 全身から 滲んでいた。


もう 仕事は辞めても いいんだけど。


こんな風に 認められると やっぱり嬉しくて。


最近は 週に一度程度だけど。

条件の良い仕事だけ 受けるようにしていた。


「はい。オッケー。いいの撮れたよ。」


カメラマンさんと モニターを覗いて。

「ありがとうございます。」

「ほら。これなんか すごく良いね。表情が 柔らかくて。」


みんなに 褒められて 嬉しいけど。

私って そんなに簡単に 表情に出るの?


「写真って 不思議でしょう。生で見るより その人の状態が よくわかったりして。誤魔化せないんだよね。」

カメラマンさんの言葉に 私は ハッとする。


圭介は ファインダー越しに 

私の何を 見ていたのだろう…


圭介が カメラマンの仕事は

受ける気は ないけど。


もしかして 私の思いは 全部 知っていたかも。


それなら それでいい…


私は 京一と生きるって 決めたんだから。

もう 迷子にならない。


撮影が終わって 着替えて

時計を見ると 5時を回ったところ。


『今 仕事が終わったの。病院に 寄ってもいい?』

私は 京一に ラインを送った。


スタジオから 帰る途中に 

京一の勤める 病院があるから。


予想外に すぐに 返信が来て。


『おいで。待ってるから。一緒に食事して 帰ろう。』


私は 付き合い初めの頃を 思い出して。

弾むような 足取りで スタジオを出た。