私の予想を 覆して 

京一が 帰宅したのは 7時過ぎだった。


「お帰りなさい…どうしたの?」

「失礼だな!早く帰るって 言ったでしょ。」

「だって。こんなこと…」


この時は まだ 半信半疑だった。


多分 また 病院から 連絡があるはず。

そうしたら 京一は 

『ごめん。まただ。』

と言って 行ってしまう…


それでも 帰って来てくれたことが 嬉しくて。

いそいそと 京一の着替えを 手伝う私。


「あのね。今日は デザートにケーキを作ったのよ。」

「ホント?涼子のケーキ 久しぶりだな。」

「フフ。時計のお礼かな…」

「じゃ 俺も 涼子に 時計のお礼 しないとだね?」

「んっ?」

「俺も 自分の時計 買ったでしょう?」

「だって それは…京一さんの お金じゃない。」

「俺のお金?2人のお金だろ?俺は 涼子のおかげで 安心して 仕事できるんだから。」

「もう…今の言葉で お礼は 十分。そんな風に 言ってもらえて 最高よ。」


やっぱり 京一と過ごす時間は 幸せで。


私は つまらないことで 笑い転げて。

そんな私に 京一も ずっと笑顔だった。


私の予想は 全く外れて。

その日 京一の電話は 鳴ることがなく。


私達の 幸せな時間は 邪魔されずに。


前日 あんなに愛し合ったのに

京一は 当然のように 私を抱いて。


「京一さん…?」

「仕事がないと 体力 余っちゃうな…」


こんな日々は 長く続かないと 思いながら。


でも こんな日々が 続くことを

私は 祈らずには いられなかった。