「涼子…ごめんな。寂しかったよな…?」

「ううん……ごめん…なさい…」


京一の胸で 泣き続ける 私の髪を 

京一は 優しく撫でる。


「涼子に こんなに 寂しい思いさせて 俺は 悪い夫だなぁ…」

「ううん…違うの……私が 甘えているだけ…」

泣きながら 途切れ途切れに 言う私を

京一は もっと強く 抱き寄せる。


「普段から 涼子には 我慢ばっかり させてるもんなぁ…」

「だって…それが…京一さんの 仕事だから…」

「自分の奥さんを こんなに 寂しがらせて 人助けなんて 笑っちゃうな。」

「そんな事 言わないで…私が 弱いだけだから…」

「これからは 仕事の仕方 変えなくちゃなあ。」


私は 京一の言葉に 驚いて 顔を上げる。


「私 京一さんのために 何もできないのに。京一さんは いつも 私のこと 思ってくれて。これだって 前に 私が 欲しいって言ったから…」

私は 付けたばかりの 腕時計に 目を落とす。

「俺は 涼子に 何もしてあげてないよ。いつも 寂しい思いばっかりさせて。」

京一は 驚いた顔をした。


「京一さん いつも 仕事 頑張っているし。私のことも 大切に してくれるもん。それなのに 寂しいなんて。私の わがままだから。」

「でも 本当は 寂しいんでしょ?」


京一は 私の頬を 両手で包んで 問いかける。


私は 正直に 頷いてしまう…

強がることも 堪えることも できなくて。


「ごめんな。これからは もっと 涼子と一緒に いるから…」


京一は 私の頭を 胸に抱き寄せた。


「ごめんなさい…本当は いつも そばに居たいの…寂しいの……」

私は 子供のように 声を上げて 

泣きじゃくってしまった。