空港での時間は 無限のように 長く感じたけど。


混み合ったロビーの 柱に寄り掛かって。

私達は 立ったまま パンを齧った。


空腹感が 紛れると 心も落ち着いて。

私達は 他愛ない話しをして 笑い合った。



「大変 ご迷惑をおかけしています。まもなく フライトが再開致します。」


ロビーに響いた 放送に 私達は 見つめ合う。


「私達 乗れるかな?」

「大丈夫。1便目は 無理でも 臨時便も 出るから。」

「じゃ 今日中には 帰れるね?」

「うん…」


圭介は ホッとした顔で 私の手を握った。


私も 笑顔で 頷いて…


これが 最後のデート。

東京に着いたら 私達は ただの仕事仲間に戻る。


別れが 見えてきたことで

私は 圭介との時間を 振り返る。


圭介と 過ごした時間は 多くないけど。

私は 圭介の存在に 助けられていた。


思うように 京一との時間が 取れなくて。

置き去りにされたような 寂しさを

私は 圭介に 埋めてもらった。


自分の存在理由さえ わからなくなるほど

寂しさに 押し潰されていた私。


圭介は まだ大丈夫って 思わせてくれた。



羽田に着いたら 圭介に 別れを告げよう…


あと 数時間。

圭介との時間を 楽しもう。



圭介に 感謝して…