マンションのエントランスで タクシーを止め

京一は コンシェルジュに 何かを伝えて。


「俺は このまま病院に行くから。部屋まで 案内してもらって。」

そう言って 私の手に キーを握らせた。


急に 心細くなって 京一を見つめる私。


「処置が終わったら 急いで 戻るから。それまで ゆっくりしてて。」

京一は そっと私の頭を撫でて

待たせていたタクシーに 乗り込む。



「お部屋まで ご案内 致します。」

1人 残された私に コンシェルジは 控え目に 声をかける。

私は 頷いて コンシェルジの後に従う。


私 どうするの?


こんな 場違いな場所に 

足を踏み入れても いいの?


京一が 戻るまで どうすればいいの?


幸せなのか 不安なのか。

期待なのか 恐怖なのか。


自分でも わからない感情に 包まれて。


鍵を開けて 入った部屋は ドラマみたいに 豪華で。


こんな所で 生活している人が 

本当に いるんだ……


私は 壁の薄い 自分のアパートを 思い出していた。