どう考えても 京一の提案は 私にだけ 有利だった。


私は 京一に好意を持っている。


一緒に住めば 一緒にいる時間も増えるし。

生活のために 嫌な仕事を 受けずに済む。


私に 断る理由は ないけれど。


京一にとっては 何の 利点も無いはず。


私は モデルっていっても 有名ではないし。

モデルの仕事で 生活できる程度に 綺麗なだけ。


私くらいの女性なら いくらでもいる。



卒業した大学だって 4流だし。

医師の妻になるほどの 教養はない。


それに 私の両親は 

ごく普通の サラリーマンだから。


有名教授の娘とか 製薬会社の令嬢とか。

京一なら 医師として メリットのある 

結婚話しだって あるはず。


黙って 考え込む私を 京一は 覗き込む。

もっと 京一の気持ちを よく知りたい。


そう思って 私が 顔を上げた時

京一の携帯が 鳴る。


「ごめん。まただ…」

そう言って 京一は 苦笑した。



「今日は 俺の部屋で 待っていてほしい。帰ってから ゆっくり話すから。行こう。」

病院からの 電話を切ると 京一は 

いつもより 強い口調で 私に言った。


私達は ちゃんと話さないといけない。

京一が 私をからかっているとは 思わないけど。


あまりにも あっさりと 

結婚っていう言葉を 口にした京一が

何を考えているのか 私は わからなかった。



タクシーに乗って 行先を告げる京一。


私 今夜 京一に抱かれるのかな…


怖々と 京一の顔を見ると

京一も 少し緊張した笑顔を 私に向けた。