怪我が すっかり治って。

京一に 会えなくなることが

私は とても寂しかった。


最後の診察の日 いつものように

京一は どこからか現れた。


「あっ。村上先生。ちょうど良かった。私 今日が 最後の診察だから。色々 お世話になりました。」

「そうか。良かったね。」

「はい。先生のおかげです。」

「俺は 何もしてないよ。兵藤さん 脳には 異常なかったじゃない。」

「でも 先生が 正確な処置を して下さったから。本当に ありがとうございました。」


「……それじゃ 全快祝いしないとね。今夜 予定ある?」


突然 病院の廊下で 京一は 私を誘った。


その夜 京一に 告白されて。

私達の 付き合いは 始まったけれど…


忙しい京一は 中々 時間が作れなくて。

デートの途中で 病院から 

呼び出されることが 何度もあった。


「大丈夫。すぐに行って。私は 1人で帰れるから。」

「いつも ごめん。この埋め合わせは 必ず するから。」



今日だって この前の ” 埋め合わせ ” だったのに…


そう思っても 仕事だから 仕方がない。

外科医と付き合うって こういうことなんだ。


私は 京一を 責める気持ちには ならなかった。


京一と過ごす時間は 

短くても 心地良かったし。


私は 京一に 愛されていると 思えたから。